霧収集と保存

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Fog water collection icon.png
ネパールで霧採取に使用されるネット

霧水の収集には、多湿期に山岳地帯で霧を取る際に使われる大きなポリプロピレン製のネットが使用される。ネットは卓越風に向かって垂直に立てられる。ネットが採取した水滴(1−40μm)は、排水路や排水溝を通じてタンクの中に流れ込む。木や草も似たような方法で霧を利用する。

一般的に採取される霧は良質だが、大気汚染や屋根についている土、錆びた金属の影響を受ける可能性もある。最初の汚染水が貯蔵タンクに流れ込むのを防ぐことで、水処理をほとんど必要とすることなく、あるいは水処理を全く必要とすることなく、飲料水や生活用水として利用することができる。

適切な環境

霧収集には霧が発生しやすい場所が最適である。卓越風が3−12m/sで何にも遮られずに吹き、雲の移流によって霧が発生する高地や、雲が山を超えなければならないような高地が最適である。海面や、夜間放射によって形成される低地の霧は、水を収集するために十分な水分や風速に欠いている。気象記録を調べたり、地元の人に相談をすると良い。

収集所を選ぶ際には気象や地理を考慮に入れることが重要である。例えば、卓越風がある(一方向からの絶え間ない風が理想的)、山頂より下に雲ができる、霧を収集する際に必要なスペースがある、大きな地形障害物がないことなどである。沿海部の雲層の場合には、山脈が沿海から5キロから10キロの範囲内にある必要がある。

十分な水が収集できれば、植物や作物を育てることもできる。植物が根付けば、直接霧水を取ることで自ら生存し続けることが可能になる。


長所 短所
- 低事業費

- 単純な技術と維持管理
- 良質な水
- 干ばつの影響を受けない

- 相対的少量の水しか採取できない

- ポリプロピレン製ネットを探すのが困難な地域もある
- 維持管理がきちん行われないと、場所によっては暴風雨やネットの脆性の影響を受ける
- 霧が頻繁に発生する必要がある
- 採集所が居住地から離れているため、壊れたり十分な維持管理が行き届かないことがある


環境の変化への対応力

海面の温度と気温の変化が、雲底の高さや雲層の範囲に影響を与える。そのため収集用のネットは必ず、霧が最も濃い地域に設置されるように確認する。気候変動によって雲の動きが変化した場合は、その地域で最大限の霧が収集できるようネットを移動する。温暖な熱帯地域の海岸林や高地森林では、霧が最も濃いため、影響を受けやすい。


霧収集を灌漑に使うことで、森林を増やしたり植被率を上げ、砂漠化を止めるのに役立てることができる。

設置、運営、維持管理

新しい霧収集ネットはドロップネットと呼ばれ、ドイツ人デザインナーのアイマク・ホーラーによって作られた。

ポリプロピレン製のネットは二重層にして使う。ネットには大抵、ポリプロピレンやポリエチレン製で、遮熱率35%、UVカットされた、1ミリ繊維のラッシェルメッシュが使われる。網目が小さくなり繊維が細くなると効率が高まる。

ネットは必要な水量を収集するのに十分な大きさである必要がある。一般的な大きさは、長さ12メートル × 高さ4メートル (48平方メートル)である。一般的な回収率は場所によって異なるが、どの地域でも1日に平均して1平方メートルあたり2〜5リットルの水を回収でき、最大で1日に10リットルを回収できる地域もある。

ネットは5メートル間隔で地形に合わせ水平に設置し、傾斜に合わせてネットの高さと同じもしくは60倍以下の距離を保つ。これが最も効率的な霧回収の方法である。こうすることで、接合されたネットに比べ風による被害を受けにくくなる。一般的には、毎秒20メートルの風速に耐えられる。ケーブルは浸食を防ぐため、水管で保護する。

一般的に1日に生成される水量は150〜750リットルですが、2,000〜5,000リットル生成できるところもある。回収効率は、霧粒が大きく、風速が強く、ネットの繊維が細く、また網目が細かいことで上がる。さらに、ネットの排水能力も重要である。維持管理の一環として、ネットは強風時には降ろされることになっている。

維持管理

ポリプロピレン製ネットの使用可能期間は約10年である。予備品(特にポリプロピレン製ネット)の入手が困難なネパールでは、維持管理が難しい。従って、ネットやその他の予備品を備えておくことが強く推奨される。維持管理の一環として、ネットは強風時には降ろされることになっている。ネットが遠隔地に設置されている場所では、耐久性を高めるための新たな設計が研究されている。

費用

費用は、霧収集機の大きさ、材料、労働力、設置場所へのアクセスと品質により異なる。小さい収集機を設置するためにかかる費用は、75USドル〜200USドルほどである。40平方メートルほどの大きな収集機になると、1,000USドル〜1,500USドルほどで、10年間使用できる。1日に2,000リットルの水を生成する村のプロジェクトになると、費用はおよそ1,500USドルかかる (FogQuest, 2011)。動力分散方式を使うことで、低予算で水を生成できるという利点が生まれる。また、使用されているパネルの数は気候条件と水の需要の変化に従い変更可能である (UNEP, 1997)。地元住民の手を借りることで、霧収穫システムの建築にかかる人件費を削減することができる。

  • 材料: ポリプロピレン製ネット1 m2あたり(ペルー、チリ): 0.25USドル
  • 作業:大きい霧収集機、貯水タンク、蛇口の建設と取り付け:
    • 熟練労働者: 1日に140人(ネパール): 1日に4USドル
    • 非熟練労働者: 1日に400人(ネパール): 1日に2.75USドル
  • 材料と人件費を含めた費用:
    • 材料を含む霧収集機: 100USドル〜200USドル
    • 48 m2 の収集機で1日に 3 l/m2/ 378USドル
    • 1m2当たりの貯水タンクと蛇口を含む費用(ネパール): 60USドル

実地経験

国際開発研究センター(1995 )によると、チリ、ペルー、エクアドルに加えて、最も潜在的利益のある地域は、アフリカ南部の大西洋岸(アンゴラ、ナミビア)、南アフリカ、カーボベルデ、中国、東イエメン、オマーン、メキシコ、ケニアとスリランカなどである。

霧収集はネパール、ペルーやチリなどで使用されている。

グアテマラにある最大の収集地では、乾季になると1日に7,000リットルの水を生成する。 ネパールでは、ネットと貯水タンクの材料費と人件費をを含め、全部で 1m2 あたり60USドルの費用がかかる。

マニュアル、ビデオ、リンク

エリトリアでの霧水プロジェクト

謝辞